もっと3Dを勉強しないとと思った時

LAで実感したことのもう一つは、「3DCGもっと頑張らないと」ということです。

LAで「デザイン画」「スケッチ」「ラフ画」とか言うと、それはすべて3DCGを指します。3DCGであることが絶対条件ではないのですが、デザイン画を描いた後に要求される修正や、追加の資料、図面化作業へのスムーズさと速さ、さらには、ポスプロクルーへのデータ渡し方などを考えると、3Dでデザインするのがベストな方法なのです。

僕は3Dでモデリング、レンダリングした後、結局Photoshopで修正し、それこそwacomのペンタブでがんがん上から要素を追加するし、時には一度印刷してアクリル絵の具とかでテクスチャをつけ足したりします。けれど、ベースは3Dデータなので、上に書いたような要求が会った時に、最初から手書きでやっているよりも早くに対応できるのです。

SketchUpが気に入られる理由

ハリウッドのデザイナーがSketchUpを好きな理由は、SketchUpにはたくさんのスタイルがあって、手書きっぽい表現を3Dでできるからです。3DCGの速さと、手描きの味がだせます。この「味」は時に、情報の良い意味の「あやふやさ」を生みます。3DCGで完璧に家具まで再現してしまうと、クライアントに、いわゆるtoo much informationを与えてしまって、「この家具のチョイスは、、、」とか、「この色はもう少し、、、」とか細かい返事が帰ってきてしまうのです。それが、ただ単に3Dライブラリから持ってきた、「仮の」小道具だとしても、わかってもらえないのです。この問題を解決するために、SketchUpで手書き風にしてプレゼンするのです。

僕は日本にいるときからSketchUpは使いこなしていましたが、それでは足りない、もっと勉強しないと、と思ったのは以下のような事件がきっかけです。

SketchUpの決定的な欠点

Constantineというドラマのセットデザインを頼まれた時のことです。デザイナーがSketchUp使いで、セットをSketchUpで作ってくれと指定がありました。僕がデザインしたもののひとつに、セットのキーとなる大きなギアのオブジェがありました。僕がザクザクっとデザインしたギアを、デザイナーがとても気に入ってくれて、それをそのまま作ることになりました。ユニオンの関係で僕は図面を引くことはなく、SketchUpでモデリングをして、レンダリングを作って、具体的な図面を引くのは別の人に託されました。

その後、「完成したよ!すごいかっこよくなってるでしょ!」と言ってデザイナーが完成したセットの写真を見せてくれました。その時、自分がデザインしたギアを見た時、愕然としてしまいました。ギアの内側のラインが、カーブではなく、カクカクになっていたのです!SketchUpはカーブに弱い、というのは僕が常々感じていることで、もしも自分が図面を引いたなら、きちんとその部分はAutoCADでカーブに変換するできところでした。でもその時のセットデザイナーは、僕の作ったSketchUpデータをそのままCNCに出してしまったのです!!最悪!と思いました。こんな有名なテレビドラマにかかわるチャンスで、こんな大きなミスをしてしまうなんて!「カクカクってなってるじゃん!」とデザイナーに言いましたが、「そんなの誰も気づかなかったよ」と言われました。結果オーライならよかったのですが、自分としてはなかなか許せるミスではありませんでした。

この時に、僕はきちんとしたNURBSモデルの作れる3Dソフトを習得する必要があると考えて、Rhinoを導入しました。今ではSketchUpはまったく使わず、すっかりRhinoユーザになってしまいました。

自由曲面までやりだして、いったい自分は何屋だろう?

もう一つ、このConstantineのセットをデザインした時に、再確認させられたSketchUpの弱点がありました。自由曲面に弱いということです。セットのデザインがおおかたできた時に、デザイナーから、DCのプロデューサーにプレゼンするために、よりディテールとムードが再現されたレンダリングを描いてほしいと言われました。で、セットにある5か所の窓にそれぞれ配置する石膏像も、モデリングすることになったのです。この像は、ヴィーナスだったり、アプサラだったり、メデューサだったり、獅子舞だったりしました。これを、SketchUp上で、しかも与えられた時間(半日くらい?)でモデリングするのは、不可能でした。結果、僕は写真を張ってアウトラインをとって、Push/Pullツールで何段かに立体にしたカクカクのモデルを使って、あとはPhotoshopで光沢や陰影を描きこんでプレゼンに出しました。

プレゼンはうまくいったらしいのですが、僕はその部分の表現の欠落に満足していませんでした。そこで導入したソフトがZBrushです。これの曲面の扱い方はユニークですが、僕のように手描きのバックグラウンドがあるアーティストにとっては、とても使い勝手の良いツールです。慣れるのに少し時間がかかりましたが、今では、自由曲面はすっかりZBrushで作ります。Rhinoとのデータの受け渡しも、慣れてしまえば、すぐできるので、Rhinoで簡単にモデリング->ZBrushで曲面だけささっとモデル->Rhinoに返してフィニッシュというワーフクローで、何でも来いです。

さらにその後、別のプロジェクトで3Dプリンタで、今までの制作過程では作れなかったオブジェを5点くらいデザインして欲しいと言われた時に、さらに3DCGの勉強を深めることができました。

最終的にはMAYAだ!

最近、他のセットデザイナーと話していると、「今まではRhinoができればセットのモデリングには困らなかった。でも、今後はMAYAの勉強が必要だ」という話に、必ずなります。キャプテンアメリカとかアベンジャーズのデザイナーと話していた時のことです。最近のセットデザインは、ここまでは実際にセットで作るけど、こっから先はCGで、となることが大部分です。そうなってくると、最初からMAYAでモデリングしていれば、話が早いのです。撮影時にも、その3Dモデルと、実際のセットを見ながら、最終的な仕上がりを見ながら撮影できるし。役者さんがCG部分に向かって演技する時も、そこにMAYAのモデルがあって、その場にモデラーがいることが、今後は必須になってくるのです。

僕はMAYAを勉強し始めた、くらいですが、モデリングにすごい癖があると感じました。メッシュの結合が、ちょっと時間かかり過ぎじゃない?しかも寸法線も出せないし。セットデザインには、基本的に不向きなソフトです。でも、その他のアニメーションに関するツールが豊富で、確かにポスプロはこれを使うよなー、という印象。これからはこっちなのかーー、と、ちょっとへこみましたが、頑張って勉強します。