コンセプトは80’sだ

「このCMは、まるでMVのような作品ですね。」

今回の作品を最初に見たときの、こんな感想から始まったインタビュー。今井がLA時代にデザインを手がけた、ファストフードチェーンWendy’sのTVCMです。今井が日本とハリウッドにおける映像制作の違いを実感したキッカケも、この作品だったそう。


「そう、まさにMV!今回は1980年代に販売していたハンバーガーの復刻版メニューのCMだから、コンセプトは80’s。当時のMVへのオマージュをたくさん組み込んでパロディのような作品にしようという話になった。」

当時のMVの特徴として、例えばどのようなものがありましたか?

「予算がない中でも、実に工夫を凝らした演出や撮影が行われていたと思う。その1つが“黒バック”という手法。登場人物の後ろに大きな黒い布を垂らすことで背景を真っ黒にし、セットの作り込みをなくすことができる。さらにモノクロにして、照明の手間も大幅に減らしたり。もちろん予算の都合ではなく使われる手法でもあるし、最近のMVでも見られる演出だけどね。」

確かに、80年代のMVでよく見ましたね!

「同じ画面に同一人物がモノクロとカラーで登場する演出なんかも、あるあるだよね。というわけで、Kim Reesとも相談して80’sへのオマージュを表現することに。ちなみにCMに登場する人物はレッドという愛称の女性。イメージキャラクターが大人になった設定だと思うんだけど、Wendy’sのCMにはほぼ必ず登場するよ。」

Wendy’s CM①『TO BE WITH YOU』

「黒バックに、モノクロとカラーで登場する同一人物。まさに当時のMVでの演出だね。レッドがMr.BigのTo be with youに合わせて歌ったりエアギターをしたりというパロディ。」

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デザイン案①

「①は、よく昔のステージであった円柱の舞台をイメージしたもの。ライブ感を意識した。」

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デザイン案②

「②は仲間内で楽しくセッションするレコーディングスタジオのイメージ。沢山の楽器とレトロな絨毯があって、温かみがあるような雰囲気。この作品はデザインを出したけれども、残念ながら僕が制作した美術はあまり出てこないんだよね。次の作品『ALL BY MYSELF』では、がっつり関わってるよ。


Wendy’s CM②『ALL BY MYSELF』

「窓、廊下、そこにある額縁。風にあおられる白いカーテン。外に見える稲光に蝋燭の炎、雨。レッドが唄うのはエリック・カルメンのAll by myself(後にセリーヌ・ディオンがカバー)の替え歌だけれど、デザインの参考にしたのはセリーヌ・ディオンのIt’s all coming back to me

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デザイン案③
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デザイン案④

元々は黒バックにする予定だったのでしょうか?

「そう、黒バックで、柱・壁・天井も作らずに巨大な窓を作ろうとしていた。その分カーテンも大きくなるから、風で揺れたらダイナミックな画が撮れるなという想定で描いたのが上の③④。
その後の打ち合わせで黒バック自体がNGになってしまったので、壁や天井もあるお屋敷のようなデザインに変更。元々は別セットで考えていた窓のシーンと廊下のシーンを一つのセットにすることになり、CGで書いたのが下のデザイン画。」

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「この柱は大理石をイメージしているけれど、実際には大理石のように塗装しただけ。これも昔のMVでは頻繁に行われていたね。」

お屋敷のデザイン、歌とも相まって、とても懐かしい映像を見ているようです。

「レッドも昔の自分の絵を見たりして、ノスタルジーに浸っているんだよね。この絵画は写真をPhotoshopで加工して絵のように見せたものだけど、ハリウッドの充実したインフラを実感した製作だった。」

と言うと?

「絵画の写真は3枚とも撮影当日のムービー前に撮影したのね。まずは左右の絵画用のスチールをグリーンバックで撮った後、野原でハンバーガーを食べようとして消えてしまうシーンのムービーと同時に真ん中の絵画用のスチールも撮影した。」

当日撮影となると、お屋敷シーンの撮影までに間に合わせるにはかなりスピーディな作業が必要ですよね。

「画像をPhotoshopで加工する作業自体はそんなに時間はかからないし、出来上がったラフを監督やクライアントに見せてOKを貰えれば、問題はプリントアウトだけ。この時はユニバーサルスタジオでの撮影で、敷地内にプリントショップがあったのが大きかった。ジョーズの池を過ぎればショップに到着!スグにプリントを始めてくれるショップの体制も整っていて、スチールの作業工程は半日もかかっていない。グリーンバックとプリント環境が敷地内に揃っていたことが大きかったね。」

スタジオ内にプリントショップとは、さすが映像の街ですね。そのスピードに沿えるインフラが整っている。

「そうだね。自分自身の作業におけるデジタル化を意識したのも、この作品から。最初にパラマウントスタジオで打ち合わせした時に『デザイン画は何日までに出せばいいか?』と聞いたら『今日中だよ。』と言われて。今日中と言っても、彼らが帰宅する夕方までに提出ということ。え、マジで?と焦った(笑)。大急ぎで手描きデザインを提出して、翌日に寸法なども追加したデザイン画をCGで提出。この作品が異例のスピードだったわけではなく、基本がこれ。やっぱりCGが出来ないと厳しい。」

手描きならではの良さがあるにせよ、デザインの確認&修正依頼もスグ対応するのがハリウッドスタイルですもんね。確かに、手書きで都度対応は難しい。

「手描きの方が良いというデザイナーも多いし、僕も同感。手描きでしか表現できないことがあるからね。でもハリウッドで仕事する上ではCGが必要不可欠だなぁと実感した撮影だった。日本も今後はそうなると思うよ。」

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