タイアカデミー賞を受賞-映画『A Moment in June』

タイで製作、公開された映画『A Moment in June』で、今井は2010年度タイアカデミー賞の最優秀美術賞を受賞。制作時のエピソードについて聞きました。
※記事の最後に、予告編の動画があります。


『A Moment in June』

この映画に参加することになった経緯は?

「監督のO. Nathaponとカメラマンのデビッドとは、アメリカ留学時代の仲間。彼らと僕は別の学校に通っていたんだけど、一緒に学生映画を作ってたんだ。卒業して最初に作った短編映画の評判が上々だったので、次は長編映画を作ろうという話に。そこで製作したのが『A Moment in June』。」

タイアカデミー賞で評価されたのは、どんな点だと思いますか?

稼働するセット 「娯楽映画の多かった当時のタイの映画界においては、映画的表現やトリックカットを多用した撮り方が斬新だったんじゃないかな。

この作品は、6人の男女が織りなす恋愛や人生、人間模様を1972年と1999年の2つの年に渡って描いたストーリー。主人公が舞台監督をつとめる劇として1972年設定のシーンが映し出されるんだけど、それが“劇中劇”としてだったり、回想としてだったり、ポンポンと切り替わる。そうした表現が評価されたんじゃないかと。」

2つの時代では、街の造りなども大きく異なりますよね。1972年のシーンはどのように再現したのでしょうか。

「例えば港のシーン。現在は原付バイクで行けばそのままフェリーに乗れるけど、1972年当時は原付バイクに乗っている人も少ないし、歩いて港に行くというのが普通だった。だから波止場も船も、今とは形が違うんだよね。それは港の資料館で調べたり、現存していた当時の船を使ったりね。

ロケハン時の映画館 (2)
映画館が舞台になるシーンでは、実際に1972年当時に営業していた映画館の建物が見つかって。既に閉館していたけれどね。この写真でも分かるように、周りには木や草が生い茂っていて、建物がジャングルに飲まれかかっていた。

 

完成した映画館セット

 

まずはブルドーザーで周囲を整備して、壁を塗装。1972年、実際に公開されていた作品のポスターを貼ったりもして、当時の雰囲気を再現した。」

 

当時、タイの映画製作市場は、どのような感じだったのでしょうか。

「当時は、東南アジアで映画を撮るならタイ、という程に盛り上がっていて、ハリウッドの撮影でもよく使われていた。タイのスタッフは香港映画で鍛えられていて、優秀だからね。それに当時は物価も安くて、この映画では9セットで美術費が1000万円くらいだったかな。日本では考えられない安さだよね。
だけどコミュニケーションには苦労したなぁ。大道具さんや装飾さんなどの技術スタッフは英語が喋れないし、タイ人だけではないのでタイ語が喋れない人もいて。“こんな風に作ってほしい”、“こんな小道具を集めてほしい”など、絵に描いてなんとか伝えたり。物価が安い一方で貧富の差も激しいから、技術スタッフのアシスタントとかは日給10円という人もいたよ。」

物価が違うとは言え、驚きの賃金ですね。他にも現地ならではと感じたことはありましたか。

「予定通りには進まない、ということを実感した半年間だった。撮影期間中にバンコクがクーデターで封鎖されたことがあったのね。帰国を考えたけど、ホテルにパスポートを取りに戻ることもできなくて。みんなで近所の田んぼにある小さな家に待機して、ニュース番組で情報を得ながら情勢を見守った。結果的に撮影が中断したのは一週間だけだったけれど、街を戦車が走るのも見たし、まるで映画のような光景が現実に繰り広げられていた。
あとはスコールが降ってスタジオ内が洪水状態だったり、田舎ではトイレもなかったり。日本でもアメリカでもしたことのない経験を沢山した。」

一筋縄ではいかなかった撮影ですが、こうして出来上がった作品が美術賞を受賞したときは、どんな気持ちだったのでしょう。

「実は、僕が受賞を知ったのは半年後。授賞式は政治情勢を理由に延期になっていたし、まさか受賞するなんて思ってないからタイに行っていなかった。スタッフの友達から連絡が来ていたんだけど、その時は、それが受賞の件を伝えていると分からなくて。半年後に“あ、受賞してたんだ”と(笑)。トロフィーも手元にないよ。でも評価をしてもらうことができて、素直に嬉しいです。」


A Moment in Juneは、日本未公開。タイ語または英語字幕でしか観ることができませんが、ご興味のある方は、ぜひご覧ください!タイを中心に活動する大人気の日本人俳優、佐藤ひろさんも出演されています。

※予告編はこちらで観ることができます!

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