Grasshopperを使わないParametricデザイン

最近、セットデザインや小道具デザインで時々要求されることのある、パラメトリックデザインに関するメモです。日本では聞いたことなかったですが、LAでの仕事では、よく出てくる単語です。自分がパラメトリックデザインをするときには、通常、RhinoのプラグインであるGrasshopperを使います。グラスホッパと読みますが、こいつは変数を入力して、そこから線や面を描き出してくれる、めちゃくちゃ優秀なツールです。でも今回は、このパラメトリックデザインを、グラスホッパを使わずにやります。つまりは数式を使わずにやる「裏ワザ」の話です。

パラメトリックデザインは、電卓でやると果てしない時間がかかる

parametric01そもそもパラメトリックデザインというのは何かというと、右の画像のような感じのデザインのことです。僕の認識では、「数式を使って描き出される線や面を使ったデザイン」です。このデザインは、プリンタのメーカーのコマーシャルのセットの壁に貼るために作ったグラフィックです。1つの3Dのモデルが、有機的なカーブを描きながら、サイズを少しずつ変えたり、歪んだりしながら、リピートされて、全体を形作っているというものです。

これのサイズの調節とかは、数式を使わずにやろうとすると、通常、気が遠くなるくらい時間がかかります。それはそれで、似たようなことを昔やったことがありましたが、電卓を片手に、少しずつ変数を変えていって、モデルを回転させて、拡大して、、、と果てしなく繰り返していけば可能です。

ZBrushのMicroMeshを使う方法

dinosaur_adult0920今回の、数式を使わない裏ワザは、ZBrushのMicroMeshです。この方法は、別のCM用に、左のようなモデルを作った時に思いつきました。残り時間1時間くらいで、Parametricな恐竜をデザインして欲しいと頼まれた時です。残り1時間となると、失敗できないので、まずは15分くらいで、こういう恐竜でいいんですよね、という確認をとっておく必要があると思ったので、ざっとフォルムを作れるZBrushのZSphereで恐竜のラフモデルを作ってクライアントに確認を取りました。その返事を待っている間に、このモデルを活かして、パラメトリックな感じにするには、と考えて、今あるポリゴンを活かして、MicroMeshでパターンをリピートさせれば、そう見えるかな、と思って作りました。

MicroMeshの使い方

ZBrushのMicroMeshの使い方を軽く書いておきます。自分の知っているTipsも加えつつ。

ZBrush Documentまずは、ベースとなるモデルを作ります。今回作ったのは、右のようなパネルです。ここまでの手順は、

  1. 平面モデルからスタートします。MicroMeshに使うので、細かいポリゴンにし過ぎないように注意が必要です。
  2. 2か所の穴をマスクで指定する。Ctrlを押しながらぐりぐりと色を塗って、境界を何段階か濃くしてから、
  3. GroupMaskedで、マスクした部分を別のPolygroupにします。この時、Polishもいくらかかけておくと、エッジのギザギザがある程度緩和されます。
  4. にしても、結局、Moveブラシでエッジを滑らかにしていきます。
  5. 中のPolygroupを消して、全体にPanelLoopをかけます。この時は、べベルの設定などは、デフォルトにしてあります。厚みだけ、全体のイメージに合うように調節します。
  6. 最後に、Polish by Featureをかけて、滑らかにします。このモデルのポリカウントが2680になりました。これ以上精細にすると後で困りそうです。常にポリカウント見ながら、丁寧に作り過ぎないように注意が必要です。

002次に、何でもいいので、有機的な形を作ります。今回はSphereから初めて、Moveブラシでぐにゃぐにゃにしたものを使っています。なるべく有機的なカーブを描きつつ、ポリゴンの大きさに差が出るように、必要なところは引き延ばしてあげます。その方がパラメトリックっぽいからです。

ここでやっているのは、あくまでも「裏ワザ」であって、チートですね。本当のパラメトリックのデザインというのは、こういうことではありません。でも、パラメトリックっぽいのをサクッと作りたい時は、この方法が早いと、僕は思います。数式とにらめっこし始めると、ある程度のシェイプが出てくるまでに時間がかかるのですが、ZBrushだと、ここまでの作業で10分かからないと思います。

この時も、ポリカウントを見ながら、Subdivisionレベルを消さないように作業する必要があります。あとでいろいろ調節する可能性を残しておきたいからです。

形がある程度固まったら、MicroMeshボタンを押して、さっき作ったパネルのモデルをあてはめます。Subdivレベルに応じて、自分の好きなディテールを選びます。時々BPRして、自分の欲しいディテールを探します。この時、Render > Render Property のところでDraw Micromeshをオンにしていないと、この点々が表示されません。

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あとは、都合のいい位置にカメラを持っていって、ライトをセッティングして、BPRするだけですね。Geometry > Convert to GEOをすると、実際にひとつひとつのパネルがGeometryに変換されます。この時、一気にポリゴンカウントが多くなるので、注意が必要です。作ったグニャグニャを、必要な部分以外はカットして、ポリゴンカウントを節約できるようにすることをお勧めします。

Photoshopとタブレットの合わせ技

先ほどの恐竜のモデルでもう一つ、パラメトリックなことを裏ワザを使って表現しています。それは、恐竜の背びれの部分です。

ここはそんなに複雑ではないので、コピーして縮小して回転させて、でもいいのですが、恐竜の背中のラインに沿った、美しい拡大比率を表現したかったので、別の手法を考えました。

その時使ったのは、Photoshopのカスタムブラシです。カスタムブラシで、背びれ1枚の形を作って、それのサイズをタブレットのペンの筆圧で変わるように設定します。あとは、間隔を調節して、ペンタブレットでさっとラインを引くと、筆圧に応じてサイズが滑らかに変化します。最初から、恐竜の背中をなぞるように線を引いているので、それをそのままモデルにすれば、大した調節も必要なく、そのまま3Dにできちゃいます。

これは、イラレを使ってラインと、リピートするパターンの合わせ技でもできたかもしれませんが、その瞬間のスピード感で考えると、思いついた瞬間に講堂い移せて、完成が身近に見えるPhotoshopの方がベターな方法だったと思います。

ひとつのデザインを作るのに、何通りもやり方はあって、その時に合ったベストな方法を使うのが一番いいと、僕は思っています。今回のパラメトリックのチートも、本当ならグラスホッパを使えってRhinoでやればいいのです。SketchUpのダイナミックコンポーネントを使うことも可能です。

その時に必要とされるスピード感と、ワークフローと、ディテールと、いろいろな要素を踏まえて、ベストなデザイン手法を選ぶ必要があると思います。

実際にやってみた動画

と、ここまで書いて、実際にやって動画にした方が分かりやすいと思ったので、動画を作りました。シンプルなモデルを作って、MicroMeshを使うだけのものです。