ゆめバーゲンCM〜一瞬のための準備~

 

interview01

IMG_20160528_075155

IMG_20160528_065106

IMG_20160528_082910

 

「1秒、2秒のカットのために準備が1時間、2時間かかります」

今井のこの言葉が何のことを指すか、ご想像がつくだろうか。

普段、特別意識せずに眺めているテレビCMの撮影のことである。

初夏の足音がすぐそこまで聴こえてくる5月某日、今井は都内の撮影スタジオにいた。

西日本で展開しているショッピングモール、ゆめタウンのセールのCM撮影のためだ。

「完成するとたった15秒のCMの撮影のために1ヶ月前から準備をしました。今回はCMの他にポスターの撮影もあったため、ポスターの準備に2週間、CMの撮影に2週間。1ヶ月間まるまるCM撮影の準備をしていたわけではありませんが、一つのプロジェクトとして捉え、1ヶ月かかった印象です」

冒頭の今井の言葉はこの文脈で出てきた。

今回の撮影で今井が最も注力した所は風船と紙袋、すべり台だ。

どれも注意深く凝視していなければ、これらのオブジェクトが出てくることを認識することさえ難しいだろう。

「紙袋は全部で約1,000枚用意しました。実際に撮影で使ったのは15枚ですが、約1,000枚の中から正に厳選した15枚だったわけです」

続けて今井はこう語る。

「ポスターとCMで使った紙袋は別の物です。どちらかと言えばポスターで使ったほうの紙袋に力を割きました。

ポスターで使った紙袋は、手に持つ20枚の広げた物が一つの大きな束のようにつながっているのですが、実はこれ1枚1枚、手作りです。大きすぎてもいけないですし、小さすぎてもダメです。

あとは質感ですね。紙のツヤは後の映像処理で足すことはできても、抜くことはできませんから」

そうして苦労しながら仕上げた紙袋を風船で浮かせるカットがあるのだが、この風船を使うというアイディアは今井の発案だった。

「企画の段階では紙袋をテグスで浮かせる予定でした。ただ、テグスで浮かせてしまうとセッティングが煩雑になる上、時間がかかりすぎるため現場では到底できないだろうと考えました。であれば風船を使うほかないと。風船を使ったほうが自由が効きますし、なにより主演である橋本環奈さんのスケジュールの都合でリハーサルができなかったため、テグスで大丈夫かどうかのリハーサルをしている余裕がありませんでした」

ちなみに、風船を浮かせるためにヘリウムを使ったのだが、業者から送られてきたヘリウムの詰まったボンベには、ノズルが付いていなかったため今井が自力でノズルを用意する必要があった、ボンベだけ送られて非常に困惑したというエピソードも付記しておこう。

「最後にすべり台ですが、角度の調整に非常に気を使いました。安全性の観点からです。映像の出来に関わるので少しでも角度を急にしたい監督と、橋本環奈さんの安全を守りたいクライアントとのせめぎあいでした。当初、角度が60度で設計されていましたが、これではあまりにも危ないので、安全面を考慮してギリギリ安全と言える35度に設計し直しました」

かくして完成した「ゆめバーゲン」のCM。

テレビでの放送圏内でなくともYouTubeで見られるので、一瞬の中に作り手のどれだけの苦労が凝縮されているかに思いを馳せながら、まばたき厳禁の15秒をご堪能されてみてはいかがだろうか。

IMG_20160527_181407

IMG_20160527_181500

IMG_20160528_081052