アニメ④美術のコンセプト

今回の作品は事前のデザインのレイアウトの多くを3Dでおこなっています。
その理由はデザインの形が複雑で手書きよりも、CGでの作業が早くて正確だと思ったからです。
「思い出のマーニー」の舞台となる「屋敷」は1人のキャラクターのようなもので、リアリティをすごく追及されていました。(屋敷のレイアウトをいれる)
アニメでは普段設定しないようなドアの厚み、柱の太さ、各部屋の入口のドアの枠の高さ(3cmとか)まで、緻密に設定していたということですが、今回私が最初にプロデューサーの西村さん(通称:ニッチ)から言われたのは「そういうのどうでもいいから」ということで、宮崎作品に通じる硬いものも柔らかくなるような、ぐにゃぐにゃの世界したいとのことでした。
以前「フラガール」で一緒に仕事をした種田陽平さんが前作「思い出のマーニー」の美術監督をしていました。
陽平さんは実写ベースで美術を考える人だったということもあり、マロさんやニッチとの話合いの結果、今回は真逆のアプローチをするということになりました。

真逆のアプローチとは「原点回帰」で「ファンタジーの世界をリアルじゃない質感で表す」ということです。
でほぎゃらりーが参加した作品で「グランブルーファンタジー」というスマホゲームがありますが、その背景、とくに飛空艇などの線は直線的でとても細かいです。
観る人もそういう美術に慣れてしまったため、人を驚かせるような美術、作品のクオリティを求めれば求めるほど、リアリティを求め、美術はどんどん細かくなったいった背景があります。
それはジブリ作品も一緒で、とくに観る人はジブリの壮大で詳細な美術を期待しているので、過去の作品より美術はかなり細かくなっていきました。
(ここでジブリの背景比較の画像をいれたいが権利的に大丈夫なのか?無理か?)
その流れに待ったをかけたのが、「かぐや姫の物語(高畑勲監督)」です。
シーンによっては一筆書きのようの背景があったりと絵画の印象派のような世界観がありました。
今回の美術監督の久保友孝(久保くん)は「かぐや姫」に参加して、今回の作品でも同じように細かく描くだけではない大胆な美術を今回の作品にも取り入れていこうとしています。
今回の美術のコンセプトにはそのような経緯がありました。
私としても作品にかかわる以上、今までにないものを求めました。

しかしそれは簡単なものではありませんでした。
過去のジブリ作品にはなかったデザイン、真新しいもの、かっこいいものを取り入れていこうと、
マロさんと久保くんと3人でこれでもかというほどアイデアを出し合い、話し合いました。
しかし、形が複雑なものはアニメの表現では難しいなどの理由でボツになることが多く、
毎回打合せにいくのが憂鬱になるほど、アイデアを出すの辛くなることもありました。
それでも今までのアニメにはなかった大胆な空間の使い方にはこだわりたかったので、マロさんと久保くんと話を詰めていく日々でした。

そんな中でやはりマロさんという人が本当にすごいと思ったのは、人の考えを吸収して、自分のものにしていくのが上手いということでした。
マロさんがデザインするものはとにかく何でも可愛い。
何度もマロさんとアイデアのキャッチボールを行うにつれ、私が考えたデザインにマロさんならではの「いろ」を加えてきて、私がまたそれに自分のアイデアを足していくという駆け引きができるようになっていきました。
そんなマロさんにたくさんのものを拾ってもらおうとかっこいいもの、大胆なアイデアをたくさん出していきました。
最初は辛いと思ったデザイン打合せでしたが、その甲斐あって、今回のデザインは今までのアニメでは複雑すぎて、アニメーターが無意識のうちに避けていた構造、デザインを進めてきたので、すごく立体的でダイナミックなシーンが出来上がると思います。どれもかっこよくそして可愛らしく素晴らしいものになったと思います。

しかしデザインを考えるだけで仕事は終わりませんでした。
みんなで必死になって考えたデザインは難しすぎるということで、このままではアニメーターさんが描けないという問題が発生してしましました。
その話はまた次回。

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