デザイナーとして撮影に立ち会う理由

前回の記事で書いたように、撮影に立ち会うデザイナーは多くはないようですが、僕はなるべく現場に行くようにしています。と言っても、実際に装飾をしたり小道具を動かしたりというより、モニター前にかじりついて業者さんやアシスタントにあれやこれやと指示を出します。

現場に立ち会うデザイナーにも2パターンいて、僕のようにモニターを見て指示を出すタイプと、自分の手を実際に動かすタイプ。ユニクロの撮影で一緒に仕事をしたKK Barrettは後者でした。僕と同じようにしていた美術の方が、「美術がモニターを見て何するの?」と言われたことがあるそうなので、そう思う人も多いかもしれませんね。

僕がモニター前で指示を出すのは、画面の中での情報の大きさや順番などをコントロールするため。こちらの記事でも書きましたが、出来上がった作品を見る人に、伝えたい情報を効率的に伝えるためです。また、僕自身がモニター前を離れてしまうと業者さんやアシスタントの動きが止まってしまうからという理由もある。

また、美術にとって照明の当たり方は外せないポイント。基本的にはオールスタッフの打ち合わせでデザイン画を見せ、「ここは照明を当ててください!」と伝えておきますが、現場で実際にカメラや照明機材をセッティングしてモニターを見てみると、自分が意図して飾った小道具やセットに的確な照明が当たっていないことがあります。その場合は先にも述べたように伝えたい情報や意味が逆転しかねないので、照明さんに調整をお願いすることもあります。逆に、照明部さんとして別のライティングプランがある時には、美術の方でセットの色や質感を調整することも。

技術の進歩で変わった、照明と美術の関係性

ここ10年程のことですが、技術の進歩で照明の方法論が少し変わってきました。カメラがフィルムからデジタルになり感度が上がるにつれ、照明部としての照明の明るさがプラティカルと同等の明るさで良くなってきたのです(照明部さんが用意する照明に対して、美術が用意するフロアライトやペンダントライト、家具としての照明をプラティカルと呼びます)。

プラティカルのワット数は100W、せいぜい500W程度。フィルムに感光させるには暗すぎるため、以前はフレームの外から1000~2000Wの大きな照明で補足する必要があったのです。逆に言えば、プラティカルはどこに置いても人物の映りに影響を与えることは少なかった。

しかしカメラがデジタル化した最近では、シーン全体で500W程度の光が回っていれば普通に撮影できるように。つまり、フレーム外の照明(照明部)とプラティカル(美術部)が同等の明るさになってきたのです。こうした変化により、双方で照明の打ち合わせをする必要性が以前よりも増しました。フロアランプを1つ置くにしても、シェードの色、薄さ、光の反射のさせ方をきっちり打ち合わせておかないと、現場で変な光を生む光源になってしまう場合があるからです。小道具やセットを活かすも殺すも照明の役割が大きいため、認識のすり合わせは欠かせません。

というわけで、“見ている人に情報を的確に伝える”美術を完成させるために、僕は撮影に立ち会うようにしていますが、もちろん現場に行けないこともある。その場合でも抜かりなく事前準備をしておくことは当然ですが、当日はアシスタントや監督、カメラマンなど、現場にいるスタッフの人達にお任せします。結果的には現場にいる人の勘が一番正しく、美術を完成させると考えていますし、そのくらい、現場で見ることは大事だと思っています。

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