東方神起ミュージックビデオ

これまで1000本以上のミュージックビデオで美術を担当してきた今井が、なかでも一番思い入れのあるアーティストは東方神起だそう。これまで、東方神起では7作品のミュージックビデオに携わっている。

「東方神起で最初に担当したのは『Lovin’ you』というシングルのMV。これは僕が初めて手掛けたメジャー作品でもあった。当時、まだキャリアも浅く人脈も少なく、業界について分からないことも多かったけれど、若さ故、とにかくガムシャラに取り組んだ。いま思えば粗削りな部分もあったと思う。だけど結果的には、その後の仕事に繋げることもできた。」

今井は、この撮影後に独立している。

「このオファーが入るよりも前に独立自体は考えていたんだけれども、『Lovin’ you』での経験が、独立に向けて最後の一押しをしてくれたような感じ。実際、撮影の翌月にはナラデザイン(株式会社ナラの樹 の前進)を設立して、その後は多くのMVでオファーを貰えるようになったし、東方神起の作品にも何本か携わらせてもらった。東方神起のアーティストとしての魅力はもちろんのこと、自分自身のキャリアにおいても大きなターニングポイントになっていて、彼らには思い入れがあるんだよね。」


東方神起の作品で今井が担当したうちの4作品について、こだわった点やエピソードを聞きました。

 

『Lovin’ you』

監督:井上強
製作:SEP
美術:今井伴也
美術助手:小宮菜々子、増田沙織、高橋利通
大道具:タフゴング
tohoshinkilovinyou

「カフェのセットをイチからデザインしたのね。もともと建築や空間を考えることが好きだから、かなり気合が入った。だけど、予算があまりなくて。大道具の会社に図面を持って行っても、こちらの予算の3倍くらいを提示されて突っぱねられちゃう。
TOHOSHINKI-LOVINGYOU (2)そこで、以前に一緒に仕事したことがあったタフゴングさんにお願いしたら、引き受けてもらえた。予算がない中で色々な注文もしてしまったけれど、本当に良いものを作ってくれて。その後の作品でも、ずっとタフゴングさんと一緒にやらせてもらってた。
untitled車が出てくるシーンは、スタジオの駐車場での撮影。そういえば横断歩道は自分で作ったなぁ。ペンキはNGだったから、マスキングテープを貼って何とか。電飾も手作りしたしね。若いから体力もあったし、今じゃできないかも(笑)。今と比べればデザイン画も心もとないクオリティだったと思うし、どこで小道具を借りるのかとか、そういうことも分かっていなかった。右往左往しながらも本当にガムシャラに取り組んだ作品だったね。」

 

 

 


『Kiss The Baby Sky』
監督:長谷川信
製作:SEP
美術:今井伴也
美術助手:山野桂

「ハウススタジオでの撮影だったからセットは作らなかったけど、監督から“壁に空の絵を飾りたい”というオーダーがあったので、撮影前日の晩に水彩絵の具で画用紙に描いた。絵のパネルにはスチレンボードを使ったのね。軽いから天井から吊るすのに丁度よくて。ただ、素材が発泡スチロールで熱に弱いから、照明の熱でだんだんと反ってしまう、という事に撮影中に気付いて。今後スチレンボードを使うなら、何かしら工夫が必要だなと学んだ撮影でした。海外の某巨匠デザイナーにこのエピソードを話したら、彼も同じ経験があると。こんな大御所でもスチレンボードでイタイ目に合ったことがあるなんて、万国共通のデザイナーあるあるだなと(笑)。それも教科書では学べないことだよね。どの現場でも一つ一つの気づきがある。

印象に残っているのは、メンバーが一斉にジャンプするシーン。あのシーンを撮影する前に、現場で“全員でジャンプするのは、果たしてイケてるのか?”という議論があって。そしたら監督が実際に、“ほら、こうジャンプしたらカッコいいでしょ!”ってお手本を見せたの(笑)。その姿にみんなが説得されて、あのシーンは出来上がった。」

 

『Break out!』
監督:井上哲央
制作:SEP
美術:今井伴也
美術助手:岩瀬直美、谷口絵梨果、秦麻衣子、鈴木麻里、西川公絵
大道具:タフゴング
塗装:ヒラコ・アート・プロ

TOHOSHINKIBREAKOUT「最初のオーダーはヨーロッパの街のようなセット。当初はプラハのような風景というイメージで言われていたんだけど、曲の世界観を考えて“奇妙な街にしよう”と提案したんだ。だから壁にお面があったり、壁から手が出てきたりと、不思議な空間になった。路地シーンが多かったから、カメラクレーンが入れるかどうかのシミュレーションを重ねながらデザインを仕上げたね。
TOHOSHINKIBREAKOUT2一番こだわったのは石畳。セットの中に石畳を作るときは通常、石畳タイルを使うんだけど、BREAK OUT!では有り物を使いたくないと思った。女性の足元のアップや真上から撮るシーンで石畳がよく映るし、有り物では、イメージするものは再現できないと思って。
そこで、発泡スチロールを手で彫って、コーティングして石のように見せるという手法で発注。だけどあがってきた物が納得いかなかったから、最終的には自分で掘ったなぁ。石畳も壁も、とにかく質感にこだわったね。」

 

『時ヲ止メテ』
監督:井上哲央
制作:SEP
美術:今井伴也
美術助手:岩瀬直美

「撮影自体は実在のプラネタリウムで行われたけれど、メンバーの背景に映る星空は手作りしたもの。デコボコしたパネルにラメを貼って、その上にスパンコールやビーズを1つ1つ付けて仕上げた。現場にパネルを持って行って照明をあててみたら、そのスパンコールがキラキラと煌いて綺麗ということが分かって。照明さんだけじゃなくて僕や助手も含めて、みんなで1個ずつ照明を持ってあてたなぁ。

アーティストはもちろん、哲央さん、宝和さん、マストさん、西川さん、進通さん、星加さん、その他たくさんの方々と、この瞬間に一緒に仕事できたことが、本当に嬉しかったし、感慨深いものがあったよ。」


最後に、アーティストやスタッフの印象について聞きました。

「メンバーが本当に仲良いなぁという印象だった。ムードメーカーであるメンバーが現場もきちんと仕切ったりと、それぞれの役割分担ができているグループだなと。『Lovin’ you』の頃も既に人気だったけれど、その後メンバーが更に垢抜けていく様も見れた。

スタッフ側も作品を重ねるごとにチーム感が増してきて、阿吽の呼吸で臨めるような空気を肌で感じていたよ。」

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