ATSUSHI PV~こだわりは細部に宿る~

 

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慌しい動き出し

薄紅色の桜の変わりに青々とした緑が木々を彩り始めた5月初旬、オファーは井上哲央からの言葉だった。

「今井くん、今度ATSUSHIのPVを撮るから、やろう」

撮影は5月半ば、オファーのタイミングとしては撮影の約2週間前であり、これは珍しいことではない。

ただ、今回は連休の直前だった。

PVの撮影には例えば小道具レンタルなど、多くの業者が絡む。

どのシーンで、どんな小道具を使って、という打ち合わせはできるが、今井がイメージした小道具があるのかどうかは実際に業者に問い合わせをしてみないとわからない。

そういった業者に連休で連絡が取れない。

実質的に動き出したのは撮影が差し迫る1週間ほど前からだった。

「もうこれだけ多くの作品に携わっていると、経験したことのないものではないけれど、でも準備期間が短かった印象はありますね」

今井自身もこう振り返るように、非常に慌しいスケジュールになった。

撮影へ

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バタバタと準備をこなし、迎えた5月中旬、撮影当日。

「一番最初、オファーをもらった直後に企画書を見た段階で『これは2日間の撮影になる』と感じました。『1日でやってほしい』というリクエストもありましたが、企画書にある内容を全てやろうとすると2日はかかると。そういった判断を瞬時に下すのもやっぱり今までの経験です」

今井の判断は認められ、2日間の撮影に決まっていた。

今回のPVはストーリー性があるもので、全体的なイメージとしては「1950年代、ハバナ革命前夜」。

「時代もテーマも違いますが、映画『ラストエンペラー』が最も空気感の似ているものだと感じました。なので『ラストエンペラー』に近づけるようにしようと思いました」

このイメージに沿ったものにするため、徹底的にこだわった。

作中に登場するピアノやビリヤード台、シャンデェリアはアンティークの物を。

今回の撮影に使用したピアノに関して、今井はこんなエピソードを明かしてくれた。

「今回はいつも撮影でお世話になっている所とは違う業者でピアノを借りました。実際に購入すると1000万円以上するアンティークで、非常に状態の良い物でした。監督もGoサインを出してくれたのですが、様々な理由から一度こちらからお断りしたんです。でも先方から『ぜひ使って欲しい』というお話を頂いて、そのピアノを使うことになりました」

ヒーロープロップ

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ATSUSHIが手に持つ葉巻はハバナ産の物を、グラスも年代が感じられる物を。

こういった、何気なく登場するようで、作品の主人公が手に取る、そこに隠されたメッセージや意味などが込められた小道具のことを「ヒーロープロップ」というのだそうだ。

「ヒーロープロップなどの小道具に関してはいつも複数、選択肢を用意するようにしています。一つしか用意していなくて『これじゃない』となったときに対応できるようにするためです。今回のPVに関してはグラスは3つ、葉巻は20本用意しました」

「ラストエンペラー」に近づけるための今井のこだわりは細部にも及び、例えばあるシーンでは飛び散る書類さえも手作りし、「撮影がしにくくなる」という理由で叶わなかったが、登場するベッドは天蓋付きの物にしようとした。

このように、私たちが普段目にする映像作品に登場する小道具は、一見すると見落としがちだが、実はそこに作り手のこだわりや情熱が込められている。

最後に、今回の作品の見所を今井に問いかけてみた。

「ベッドルームのシーンです。装飾が最もよく飾れました。ボリュームを出せました。あとは、紙資料が舞うシーンですね。実はこの資料、白い紙に古い紙の感じを印刷して質感を出して、その上に当時の地図なんかを印刷しています。時代再現というか、真新しい白い紙だとシーンに馴染まないですから」

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